資本金

資本金の額が増加すると,それだけの資金調達ができる企業であるという意味で対外的な信用が増える面もありますが,


   ・会社法上大会社となり会計監査人設置が強制(資本金の額が5億円以上)
     →会計監査人との監査契約を締結する必要があり,監査コスト増になります。
   ・外形標準課税が適用される(資本金等の額が1億円超)
   ・交際費が損金不算入(資本金の額が1億円超)


ベンチャー企業にとってはできるだけ避けたいはずのキャッシュアウトが増えてしまう側面もあります。

そのため,増資の際には,払込金額の半分を資本準備金に組入れることで,資本金の額が増えることを可能な限り回避するようにアドバイスをすることが多いです。

もちろん,資本政策を策定して,「計画的」に資本金の額を増加させる場合は構いません。ただ,運転資金を調達するために増資を行ったのに,避けられるはずのキャッシュアウトが出てしまうことは非常にもったいないと思います。

また,(こんなことを書いてしまうと,会計士の先生に怒られてしまうかもしれませんが)IPOを目指されている場合は,社内体制ができていないのに監査法人と監査契約を締結してしまうと,いろいろと後が大変です。

その場合,減資を行って資本金の額を減少させるという対応があります。会社法では,大会社の判定時期は事業年度末ですので,期中に資本金の額が5億円未満になるように減資を行うことができれば,大会社になることを回避できます。

ただ,会社法上の「資本金の額」と,税務上の「資本金等の額」の概念は違います。そのため,会社法上の減資を行っても,税務上の資本金等の額は直ちには減少しませんので,税務上のキャッシュアウトの増加を止めることはできません。

「資本金等の額」を減少させるためには,有償減資をすることになりますが,これは会社から資金流出を伴いますので,非常にやっかいです。

という次第ですので,キャッシュフローのためには,増資の際には払込金額の半分を資本準備金とすることを忘れないようにして頂ければと思います。